倭歌は歴史を詠う 「豊国の万葉集」
於:小倉城庭園研修室 記紀万葉研究家 福永晋三
「万葉集」巻第六 雑歌 923〜927番 (赤人も「吉野」を詠う)
山部赤人にも「吉野の宮」を詠った歌が『万葉集』巻6にある。
923
924
925
926
925番歌は、山部赤人の代表作の一つで有名な歌である。良い風景だなとは、一つも詠まない。叙景を淡々と詠み、それを聞いて読む人に良い風景だなと思わせる。非常に良い詠い方である。
下記は、山国川の写真である。この川が流れている所に吉野宮(山国町吉野の若宮神社)があったと考えている。
山部赤人が、924番歌の冒頭で「三吉野(み吉野)」と詠んでいるが、この句は、大伴旅人も巻3の315番歌で詠んでいる。
そして、「象山」の句があるように、旅人の316番歌には「象乃小河(象の小川)」の句があり、これも共通している。
927
927番歌の後の菅原道真公が付けた左注があり、「長歌923番・反歌924・925番」と「長歌926番・反歌927番」の先後関係が違っているように思うが、目の前にある旧本通りの順に載せておくと書かれている。いずれにせよ、「吉野宮」の歌である。
926番の歌にある「秋津」、「小野」であるが、吉野宮と考えている若宮神社のある山国町吉野より山国川に沿って国道496号線を下った所に山国町平小野と場所がある。
歌と同じく「秋津」で狩りをした記事が『日本書紀』雄略紀にある。
「(雄略天皇四年)秋八月辛卯朔戊申、行二 幸吉野宮一 。庚戌、幸二 于河上小野一
。命二 虞人一 駈レ 獸。欲二 躬射一 而待。」
最初に吉野宮を建てたのは、応神天皇である。その吉野宮があった所は、平小野菅原神社ではなかったと思っている。